フランソワ・オゾンについて ファブリス・ルキーニ
ファブリス・ルキーニがオゾン作品に初めて登場したのは『しあわせの雨傘』だった。カトリーヌ・ドヌーブが活躍するコメディタッチの作品。これはオゾンとしては『8人の女たち』と同様の様式的なポップさを全面に出したものだった。
ここに出てくるファブリス・ルキーニが面白かった。根性の悪い嫌味なおじさんっぷりが本当に憎らしく、カトリーヌー・ドヌーブ演じる正義感の強い奥さんを引き立てていた。私はファブリス・ルキーニが大好きになった。あの眼鏡と薄い髪と偏屈な喋り方がツボに入りまくった。
その後『屋根裏部屋のマリアたち』での、茹で卵の出来具合にこだわる嫌な男もよかった。
オゾンの新作はちょっとびっくりだ。ファブリス・ルキーニの素晴らしさをこんなに感じたことはなかった。文学者としての側面も垣間見れるような。でも本人とすれば空っぽにして使える役者になることに徹したらしい。ラストシーンのファブリス・ルキーニは生々しくて、これは彼本人じゃないだろうかと思ったら泣けてきた。
巧みなだけではない凄い俳優だ。
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