健全な身体に不健全な魂を宿して〜富士五湖ウルトラ、完結編

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レース中、"ウルトラに敗者なし"と紙か布に大きく書いたものを掲げて応援しているひとがいました。
それを見たときは胸が熱くなり涙が滲みました。

私は基本的に"2位は敗者の頂点"というエゲツナイ考え方をする方で、だからあまりいつも幸せではありません。

でも初ウルトラを終えてみて思いました。
確かにスタート地点に立てただけで勝者だと。
途中でリタイアしようが、ビリだろうが、ここまで来たことが素晴らしい。
何故ならフルやハーフのマラソンとは違い、かなりの覚悟が必要なものだから。
間違えたら死ぬかもしれないし、内臓や筋肉へのダメージは必ずある。自分の体力がどれだけあるか、不安でしょうがないです。
だからスタート地点へ立てたひとというのは、ひとり残らず何かしらの練習をしてきたはず。
フルは練習なしで遊び感覚で参加するひともいます。東京マラソンの放映を見てると、歩いているランナーが多くてビックリします。10倍以上の抽選なのに、そんな程度の走力のランナーが出場するとは。もっと軽いファンランレースにすればいいのに。練習を重ねていても抽選に外れたランナーに権利を譲った方がいいんじゃない?とまで思いました。
ウルトラは全く別物でした。
練習なしで参加するというのは正に自殺行為。参加者は不安を振り切る為に練習せざるを得えなかったはず。
装備やウェアも皆、凝ってました。多く見たのは「熊本頑張れ!」というメッセージを背中に貼っているランナー。
長く走ることの幸せパワーを被災地に届けたい、という気持ちなのだと思います。
主催者側は全ランナーが走った総距離分、1km1円計算で被災地にお金を送ると決めたそうです。

私は何故ウルトラを走ったのか。
この記録を『健全な身体に不健全な魂を宿して』というタイトルにしたことを思い出します。
暗い歌を歌うマイナーで怖いひと、というのがきっと私のイメージです。
引きこもって泣いていたり、誰かに恨みを抱いて復讐の機会を狙っている嫌な女でしょう。痩せててツンケンしてプライドも高そう、という感じだと思います。
でも私自身は全然そんなことはないです。
なるべくひとに優しくしたいし幸せでいたい。イノセントに平等や平和を信じていないだけで、誰かを傷付けて喜びを得る人間ではありません。
鬱病を抱えマイナス思考なのは変えられないのですが、常にそんな弱さとも闘ってきたと思います。
走るのは苦しく辛い行為です。でも走っていれば精神安定剤も睡眠薬も、もちろん抗うつ剤も要りません。肉体も精神も勝手に、いつしか少しずついいものと入れ替わって行きました。

また体育会系に対する一般的イメージにも違和感を覚えます。
音楽やアートとは正反対なものというイメージ。社会性のないアウトローな天才がやるものみたいな。だからなのか音楽のレンタルスタジオでのアマチュアミュージシャンは皆、仕事の如くタバコを吸います。このひとたちは自分をアウトローな天才に見せたくて仕方ないのだな、といつも思います。
きっとそういうことじゃないです。
いい作品を作るのも、いいパフォーマンスをするのも、結局は筋肉なのです。
長く苦しんでも到達できない作品作りというもの、それはバカみたいに当たり前。ネットで批判される度に心は折れ、売れなければ死にたくなります。
腐らず投げ出さず、全てをタフに超えて行ける心の筋肉が絶対に必要なのです。タバコを吸ってサングラスかけてカッコつけても筋肉はつきません。

苦難と対決するには、フィジカル面をアップさせることだと思いました。
私は闇も歌うし、生きる幸せも、誰かを真剣に愛する歌も歌います。
決してどちらかに寄ってはいないのです。
そういうことを表現したかった。

ウルトラをゴールできた女子ランナーのことをよく"ウルトラの母"といいます。
でも私はその呼ばれ方があまり好きではありません。だってまだ華の独身、子供のいない単身者です!いきなり母になりたくない。
なので男子ランナーを呼ぶ名前で呼ばれたい。
ウルトラマンです!
そう、私はやっとウルトラマンになれました(笑)
どうぞ今後共、ウルトラマンlukiをよろしくお願いします。

健全な身体に不健全な魂を宿して〜富士五湖ウルトラ、補給編

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ウルトラでの補給は命づな。これに失敗したら完走はもとより取り返しのつかないダメージを残すものと、かなり慎重に考えました。
前日のツアーバスに乗り込むあたりからウォーターローディングを始めました。写真左下の白い箱、これは電解質水を作るパウダーです。ウルトラランナーの岩本さんが開発に加わっただけあり走るときには最適、痒いとこに手が届くようなものでした。スポーツドリンクみたいに甘過ぎず、経口補水液よりも美味しく吸収がいいです。味はスイカです。ランナーには何故か大酒飲みが多く、レース中に酒っぽいものを連想しないようにスイカ味にしたそうです。確かにレモンやグレープフルーツはサワーを思い出し、二日酔いの記憶と混じって気分が下がりそう。
このパウダーで作った水を行きのバスからレース中まで使いました。
身体により多くの水分を溜め込むことができ、トイレの回数も減ります。美味しいので大量に飲めました。

ステラ・マッカートニーのポーチはデカめですがこれも優秀です。装備がある程度必要なウルトラでは、これくらいの大きさはあっても良いと思いました。
中に仕込んだのは45分毎に入れるエネルギージェル、自作ジェル(米飴にローカカオとマキベリー、マカ、ライスミルク)、BCAAサプリとLグルタミン酸とオルニチン、日焼け止めスプレー、現金、スマホ、クレジットカード、マネーカード、ウェットティッシュ、胃腸薬2種(胃酸抑制、胃粘膜保護)、ロキソニンです。
多分これが私に最低必要な装備。

実際走ってみてどうだったか。
あっさりと撃沈!
予測不可能なことが起こるものです。

まず午前2時に宿で朝食だったのですが、私はヴィーガンの為、食べられないものだらけでした。ミートボールやハムは肉入りオムレツは避け、パックの野菜果物ジュースと納豆、海苔、梅干しでご飯を2杯食しました。
大きなバナナも付いてました。きっとランナー向けにしてくださったのでしょう。けれどお腹いっぱいです。
周りの女の子たちもバナナは入らず、貰ってレース前に食べると言ってました。
私もそのつもりで貰ってレース場へ行きました。
けれどレース直前になってもバナナを食べたい気分になりませんでした。仕方なくポーチに入れます。あとあと役立つだろうと思って。
レース前にBCAAとグルタミンを入れて血中濃度を上げて置きます。
ここまでは順調。会場の女子トイレは空いていて2回も行けたし、万全な体調でした。

そしてスタート。計画通り7km地点あたりから補給を始めます。信号で止まるタイミングでジェルを摂取できるとラッキー。水分は手持ちボトルでチョコチョコ飲んでます。15kmあたりでそろそろサプリ系を入れなきゃとポーチを探ってビックリ!粉が散乱してます。オブラート包みのグルタミン酸が散乱しているよう。ちゃんとジップロックに入れたのに解せません。
でも走りながらなので、詳細を確かめる余裕はなく無事なBCAAサプリだけを摂りました。
おかしいな、おかしいな、と歌いながら走ります。走ってるときはある種パニック状態なゆえ変な語句が頭をヘビーローテーションします。
このときは「グルタミン酸おかしいな」の歌を作りヘビロテです。
ちなみにその後は最近作った自分の曲が順番に頭に浮かびヘビロテです。気が狂うほど繰り返されました。

30km地点で朝残したバナナを食べて、あることに気づきました。
この大きなバナナが凶器だっのです。
ヘタの固い部分がグルタミン酸のジップロックを破ってしまったのです。普段ならそんなことないでしょうが、結構な衝撃を受け続けているポーチ内、バナナのヘタがガツガツと当たったようです。
しかしレース中に打撃を受けている暇はなく、まあそんなこともあるさ、と粉まみれのポーチを払いながら走ります。
でも時間になってジェルやBCAAや電解質パウダーを取り出し度に不安がよぎります。
全てが粉まみれだったのが、そのうち取り出すものがネトネトしてきました。なんだコリャ!何故にネトネト!そんなにアタシは汗っかきなのか。それとも変な液体を身体から出しているのか。さすがウルトラ、体内変化が尋常じゃない。しかしキモい、キモ過ぎる。
などと自問自答しながら走ります。

56km地点のドロップエイドで友人に会ったときも、キモい液体を噴出しているのがバレないように「お疲れさま〜!久しぶり〜!」と明るく言いながらも、ポーチ付近を気にしてコソコソします。ここでは預けておいた豆乳を飲みました。これも岩本さんのオススメです。プロテイン量がメチャクチャ多く、アルギニン?だったかランナー疲労に効く成分も多く含まれていてドロップバッグに入れるものとして最適と聞きました。
これで出発すれば良かったのですが、エイドの高価なエネルギーゼリーの前を素通りすることができず、貰ってしまいました。
走り編にも書いた通り、これが駄目でした。
かなりのボリュームのゼリーがお腹に溜まりあとあとトイレに行くハメに。これは多分ホエイ系成分や人口甘味料が含まれてたよう。
多分自分の考え抜いた補給品だけならそんなこともなかったかなと。ヴィーガンで作った身体はナチュラルな補給でないとバランスが崩れます。

崩れてしまってからは一気にどうでもよくなって、お腹もいっぱいだしジェルの摂取頻度が減りました。どこかでヤバいなと気づいていて、胃腸薬を2回投入。
右のふくらはぎが少しキリキリし始めてロキソニンを投入。その30分後にももう1錠。

後半戦は自分の持久力との勝負でした。もう胃腸はかなりヤラれていてジェルは殆ど摂れません。
エイドで小さめおにぎり、桃の形のお饅頭半分を頂きました。でも味は感じず。身体を待たせる為だけに炭水化物を入れてました。
電解質水も辛くなってきて真水を貰って飲みました。本当はいけないのだけど、口内がもう限界でただの水を欲します。

今思い返してみれば、最後のキツい坂でカフェインジェルを無理矢理でも摂取すべきだったなと。
途中でカフェイン入りはかなり効いた感じがしました。
ただ最後あたりは何も食べたくないし飲みたくない。口から食道や胃まで炎症を起こしている感じです。

でもゴールしたらいきなりお腹が減りました。多分何かが狂ってるのでしょう。
完走証と一緒にくれるアミノバイタルゼリーを一気に食べ、会場内のエイドも一通り寄ってフルーツなど頂きました。

着替えたら異様に寒く、ストーブの前に座り込みました。
するとマッサージサービスの学生さんが、暖かいお茶をくれて毛布まで持ってきてくださいました。ありがたかったです。
帰りのバスが出発するのは19時半。
最後のランナーがゴールするのが19時だからです。でも私がゴールしたのは15時9分頃。
相当な時間をストーブの前で過ごしました。
おかげで隣に座るランナーさんたちと会話できました。
それぞれ長い闘いを終えた者同士、話も楽しかったです。
帰宅後はお腹が空いてグーグー鳴りました。でも何か食べると口内に激痛が走ります。私は普段ナチュラルフード食べてる分、レース後はカップ麺みたいな身体に悪そうなものをどうしても食べたくなります。でも口が痛くて食べられません。
唯一いけたのは生レタス。仕方ないのでレタスにカップ麺の麺を少量ずつ包んで食べました。
最後にネトネト理由、判明しました。
あのデカバナナはグルタミン酸ジップロックだけでなく、ジェル袋も破っていたのです。
水分多めのジェルが一つ、使った記憶もないのに空になってました。
コイツかぁ〜と着替えた後にわかりました。
ついでにこれでスマホは見事全壊です。
想定外のことが起こるのがウルトラ。
少し前よりタフな精神になれた気がします。

健全な身体に不健全な魂を宿して〜富士五湖ウルトラ、ウェア編

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こんなに着ていました。本当は左のステラ・マッカートニーの上下と帽子だけにしたくて、練習のロングランで2回試しました。
1回目は曇りの日でしたが、日焼け止めを親の仇の如く塗りたくりました。でも恐ろしいほどの日焼け!足と腕がガッツリ焼けました。
なので2回目はアームカバーをつけて、露出部位は日焼け止めの上にファンデーションまで塗って走りました。
そうしたらまたもや日焼け。肩にはランニングシャツの形に跡が付きました。
ランナーならそんなことは気にせず走る!のが正しいとは思います。フルならこれで行くかも。
けれど10時間近く野外を走るウルトラではどんなことになってしまうのか。恐ろしいです。黒くならだけならいいけど、後にシミやシワになったら落ち込みます。
その後、試行錯誤を重ねこのようなラインナップになりました。
インナーはCWXの揺れを防ぐもの、その上にファイントラックのパワーメッシュ上下、CEPのハイソックス、更にファイテンのコンプレッション上下、それでやっとオサレなステラさんを着られる!
結局、この重ね着は最強でした。
レース当日の天気は概ね晴れでしたが、スタート時は寒く震えました。カシャカシャいう雨天対応の超薄ジャケを着ているランナーが多かったです。
あれは実は危険なのです。私も雨天のロングで試しましたが、軽くて暖かい良さがある反面、通気性はかなり低いです。走って5分もすると蒸れて気持ち悪くなってしまいます。
脱いで腰に巻いたり小さく畳んでポーチに入れるなりベルトにぶら下げることもできます。
しかしそれは時間がどうでもいい練習だから。そのひと手間でどれだけのタイムロスが生じるか。レースではなるべく余計な負担がない方が有利です。
実際に富士五湖でそれを着用していたランナーは腰に巻いたり暑くても着続けたりしてました。脱ぎ捨てサービスがあるエイドで預けることもできます。その場で指定の袋を貰いゼッケンナンバーを書いて預けます。数分は使ってしまいそう。
後半まで着続けていたランナーの背中を見たらビッショリ濡れてシャカシャカジャケットが張り付いてました。同情します。

私の着ていたファイントラックは元は山用のもので汗を全く感じさせなくなるものです。上に重ねるものに水分を移動させる機能があり、肌はずっとサラサラなまま。雨にあたってもそれほど負担がないそう。
CEPのハイソックスは手離せない愛用品です。テーピング効果があって、ふくらはぎは勿論足首周りや足裏も守ってくれます。これにテーピングテープをプラスするのは余計な感じがしました。結構固いソックスなのでテーピングがヨレて豆ができやすいです。CEPの白いのも購入したのだけど、何故か黒より圧力がソフトであまり使えませんでした。同じモデルなのに不思議です。
首周りはBuff、手袋やサングラスは安いものです。ステラのキャップも優秀です。デザイン性が高いだけではなく、どんな強風でも飛ばず紫外線も防ぎます。
そしてシューズはOnのクラウドレーサー。
これにして大正解!重い厚底にしていたら持たなかったと思います。地面を直に感じる、薄い固めシューズは賭けでした。岩本さん説を信じて良かったです。

レース中は曇り、カンカン照り、雨、向かい風、霧など、雪はなかったものの、かなり豪華なフルコースでした。全てに対応できた私のウェアに感謝!

普通のこともやってます

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マラソンや映画のことばかり書いてますが、一応私は音楽に携わる人間です。今夜はスタジオでアレンジ作業。
私は歌詞作り。ひとつできたので読書などしてます。『ラオスにいったい何があるというんですか?』は村上春樹さんの紀行文。
彼のエッセイ類は(たまに小説でも)ランニングの話が必ずといっても出てきて、私としては共感することが多いです。
さすがに紀行文では、と思ったらのっけからボストンマラソンの話でした。
知性と筋肉は別物ではないようです。

健全な身体に不健全な魂を宿して〜富士五湖ウルトラ、走り編

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入賞もしなかった私の走りなど、どなたの参考にもならないでしょうが、自分の記録の為に残しておこうと思います。
100km制覇にあたって、まず重要なのはどんなペースで走るかでした。10時間切りを目指すなら1kmあたり6分で行けば成功できます。
私のフルのペースは5分17秒で、10kmや20kmのペースはだいたい4分半くらいなので6分で走るのはそれほど大変ではありません。
でも長距離を持続する体力があるか、またトイレや給食などで使うロスタイム、風や雨などの不測の事態、そして体調やメンタル問題。
全ての条件を完全にクリアすることはかなり難しいです。やってみなきゃわかんない、って感じでした。
それで一応、5分45秒をペースとして目安にしました。スタートからゴールまでの5km毎の到達時間をテーピングテープに書き、左腕に貼りました。
そしてスタート。4時45分はまだ暗いですが2日前の練習で試していて、15分後には明るくなることがわかっていました。
同時刻スタートのランナーは600人以上いたのでしばらくは団子状態。およそ10km地点までは自分のペースにはならないだろうなと予想した通りでした。
団子で進みつつも結構な坂を上がったり下ったりします。10km越えて団子がバラけてきたあたりの下りでワタシ走りを始めました。
これは下りの自分独特の技で、ひたすら落下するというもの。
具体的にやることは身体の力をほぼ全部抜くイメージであらゆるスイッチを切ります。急な下り坂に対して垂直に立ち、重力で落ちて行くのに任せ落下します。4分前半くらいのスピードが出るのでかなり怖いです。でも恐れてふくらはぎや膝や足首などでブレーキをかけないようにします。そのブレーキで足が痛むので。転ばない為には重心を下げるのが大事。腕の力を抜いてブラブラと身体の横に下げると重心が下がります。
かなり変なフォームです。お化けのようにフワフワグニャグニャした物体が坂を平行移動している感じです。
しかしこれは絶大なワタシ技で、おそらくこれを使う毎に100人は軽く抜いてました。しかも体力のロスはゼロ。下りながら休憩ができるわけです。
こうやって団子を抜けた後は平坦ロードでは大体5分30秒ペースで安定しました。
それで50kmあたりまで進むと、腕に貼った目標到達時間より3分ほど速くなってました。
今だから告白しますが、この地点で私は身の程知らずにも優勝を狙っていました。8時間台で走るひとがいたら終わりですが、後半にもっとペースアップする予定の私は9時間半を切ってゴールするつもりで、上位に行ける可能性があると考えていました。
けれどやはりウルトラはそんな甘いもんじゃありませんでした。
56kmのドロップエイドで友人に会い話をして、預けていた袋の中の豆乳を飲み、エイドでエネルギーゼリーを頂きポーチに入れようとしたら大き過ぎてその場で食べることに。
それが後々響きました。
西湖に着いた頃、トイレに行きたくなったのです。私の計画ではレース中はトイレに行くつもりはなく、その為に前日から電解質水でウォーターローディングをしていました。でも女子の参加が少ないウルトラでは女子トイレはガラガラでいつでも入れると聞いてました。なので綺麗そうな西湖のトイレに向かいました。
あろうことかここのトイレが激混み!10分くらいのタイムロスです。
ちなみに私はエイドはまずスルーです。立ち止まり飲み食いというのはしません。かなり美味しそうな吉田のうどんもスルーです。15km毎に手持ちボトルに水を補給するのみで、ポーチに仕込んだジェルとサプリで持たせるつもりでした。
あのゼリーさえ摂らなければと後悔しても時既に遅し。
腕に貼ったタイム表も見る気が段々失せてきます。
そんな頃に現れる上がり坂。たまに歩いてしまいました。
精進湖に向かうあたりで71kmに参加しているゲストランナーのオリンピックメダリストのエリック・ワイナイナさんとすれ違い挨拶しました。それで少し元気が出てまたペースアップできました。
精進湖一回りを終えると、これから精進湖へ向かうランナーとたくさんすれ違います。
知り合いにも遭遇、前夜祭で会ったおじさんともすれ違いました。ここで向けられるのは「コイツ速いな」という、たくさんの視線です。
ここで歩いたりみっともない姿を見せたらいかん!と頑張りました。
しかし上り坂の打撃はかなり溜まっています。もうタイムがどうということは考えず、走れるときは走る、下り坂でまた稼ぐことにしました。
70km地点にはウルトラエリートランナーの岩本能史さんがいらっしゃいました。私は彼の方式で練習をしてきたので実物に対面して軽いトキメキが。きっとご自分のチームメンバーを応援される為にいらしたのだと思いますが、私にも「頑張れ!」と声を掛けてくださいました。かなり元気を取り戻し元のペースに。
しかしすみません。岩本さんチームの100kmの方々は男子も女子も全て抜かせて頂きました。
これで最後まで行けるかなと思いました。が最後の魔物が待っていました。
ラスト5kmの上り坂です。これは予想を超えた難関でした。
なんせ95kmほど走った後です。辛くて辛くて泣きそうです。リタイアしたくなりました。馬鹿です。ここでリタイアするとしたら「次のエイドまで歩いてください」の次のエイドはゴールなのですから。
追い打ちをかけるように霧が出てきました。
前が見えません。
10歩歩いて10歩走るというのを繰り返しヨロヨロ上がって行きます。
途中に私設エイドがありました。女の子ふたりにどこかのコーチっぽい男性ひとりでコーラを紙コップに用意しニコニコしています。
声を掛けてくださいました。
「僕もここでは歩くことあるよ。あと1・5km上がりで平坦のあと下りになるから頑張って」
まるで神の声に聞こえ、それまで一度も立ち寄らなかった私設エイドですが、コーラを頂きました。
「ありがとうございます。行ってきます」と言い残りを進みました。
果てしなく続くような上り坂がいつしか終わり頂上の平坦が少し、そして一気に下りに突入しました。ワタシ技が最後に出てきました。こんなラストで4分ペースになれるとは、結構走れるじゃんワタシ、というどうでもいい感動。もう訳がわからないまま競技場に入り、大歓声に迎えられました。
テープを切ってメダルを掛けてもらい、写真のタオルに包んで頂きました。
混乱しているので終わったのか途中なのか不明なままベンチに誘導されました。
シューズに付けた計測チップまで丁寧に外してくださって、至れり尽くせり。疲れたでしょう、あちらに豚汁ありますよ、オレンジも食べてね、などと周囲の皆さんがまるでボケ老人に対するように接してくださいます。

こんな感じで散々な私の走りは終了しました。
経験がものをいうウルトラ、あまりにも初めてな素人の私でした。