ルノワール 陽だまりの裸婦
ルノワールって喫茶店のことかと思っていた。
秋は芸術家の伝記ものが多い。そんな気分になるのかもしれない。
「現実の世界には、悲しい出来事がいっぱいある。だから私の絵は、美しく愛らしいものでなれけばならない」という名言を遺したピエール=オーギュスト・ルノワール。確かに彼の作品に黒はない。薄い水色やグリーンの世界にピンク色の肌をした女がいる、ってイメージ。この映画はルノワールの晩年の話。麻痺が進み絵筆も握りづらくなった頃に現れたアンドレという女。亡くなったばかりのルノワール夫人からの紹介だという。
脂肪たっぷりの柔らかそうな肌はルノワール好み。アンドレは彼のミューズとなり晩年の多くの作品に登場することとなる。
またルノワールの息子との関係も興味深い。第一次世界大戦で足を負傷し帰還した次男ジャンも、父と同じくアンドレに関心を持つ。映画が好きなジャンはアンドレを女優として自分の作品に出演させたいという野望を抱く。もちろん恋愛感情があってこそなんだけど。
当のアンドレは美しく天真爛漫だが、芸術的才能があるかは不明。女優になってゴージャスな生活をしてちやほやされたい程度のことしか考えていない。
後年、名を遺したのは巨匠ルノワール、映画監督ジャン・ルノワールだった。ふたりの男を芸術へと奮い立たせた女は、誰の記憶にも残らず忘れ去られていった。ミューズというのはいつもそんな運命を辿る気がする。
10月4日からロードショー。
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