セルジオ・カステリットについて 赤いアモーレ

2004年のイタリア映画『赤いアモーレ』。セルジオ・カステリット監督の作品。原作はマーガレート・マッツアンティーニ。ふたりは夫婦だ。
アモーレ!というと、なんだか陽気なラテン系コメディーを想像してしまいそうだが、これは重い愛の物語。
裕福な外科医の男が車の故障でたまたま立ち寄った安っぽい居酒屋、そこで給仕している女。電話も繋がらなくて困る男に女は自宅の電話を貸すと言う。カラカラに渇いた暑い夏、前を歩く女は下品なミニスカート、がに股で歯並びも悪くド派手な化粧をしている。案内された彼女の家は寂れた廃墟のような団地。玄関には踏むと間抜けな音のするマットが敷いてある。不意に劣情を刺激された男は女を犯してしまう。女はそれほど抵抗しない。
男は真っ当な市民だ。美しい海辺の豪邸に美しい妻と暮らしている。何故あんなことをしてしまったか、後悔して後日謝りに行く。そしてまた犯してしまう。罪悪感に苛まれる男に、女は「スパゲティー作るけど食べる?」と聞く。恵まれた男と最下層の女は、不条理で不可解な愛の地獄に堕ちて行く。

まるで遠藤周作の『私が棄てた女』イタリア版。この作品は衝撃的だった。しかし不快な感じはしなかった。赤いパンプスをプレゼントするところなど、フェミニンであるとさえ思えた。話だけ聞けば許せない内容なのに。
セルジオ・カステリットは『グラン・ブルー』にも出てた俳優出身の監督。この作品では外科医の男を演じてもいる。独特の美しい影像を撮る。下品なシーンも文学作品のように叙情的。女はイタリアというカトリックの聖母を表すような名前で、ペネロペ・クルスが演じる。歯はどうやってメイクしたんだろう。不細工で、そこが哀しくて良かった。
不思議な後味の『赤いアモーレ』。身体も心も朽ちて行く女に「僕のことを許さないだろうね」と男は言う。すると女は「神が私たちを許さないわ」と応える。凄いグっとくる場面だった。
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