グザヴィエ・ドランについて マイ・マザー
『マイ・マザー』を観た。2009年の、この作品を観たくて探していた。ソフト化はされていない、テレビの映画チャンネルで一部放映されたらしい、などあやふやな情報しか得られなかった。タイトルも『マイ・マザー 青春の傷口』とか『母を殺す』だとかなんだかわからなかった。
そんな中、試写会のお知らせを頂いた。おお!来たか!と興奮して初日に観に行った。
私とリアルに接する機会のあるひとは「またか」と思うにちがいない。ここひとつきグザヴィエ・ドラン病な私は会う人のほとんどに「どうか、あなたの2時間48分を『わたしはロランス』を観る時間にください!」と勝手に宣伝マンと化していた。『わたしはロランス』は公開が始まっている。その話はまた後日。
まずは『マイ・マザー』。これはグザヴィエ・ドランの長編デビュー作品だ。この写真にあるイケメンの若者がそのひとである。彼が18とか19歳のときに撮ったもので、初監督にしてカンヌ映画祭で受賞、アカデミー賞カナダ代表、セザール賞外国語部門ノミネートなど輝かしい作品。なのに日本じゃ公開されてなかった。不思議な国、日本。アートを認めたがらない。『わたしはロランス』の世界的ヒットを聞いてやっと観られるようになるのだ。
『マイ・マザー』がどういう作品かと乱暴にいうと、近親憎悪だ。母を忌み嫌うユベール(グザヴィエ・ドラン自ら演じている)は「僕は息子に向いてないかもしれない」と言う。すると女教師は「母親に向いてないひともいるわ」と言う。空想で母を殺す、そんな自分に苛立ち不信感を増殖させる。身近なひとの嫌な部分は気になってしまうものだ。特に肉親だと自分にも存在する嫌な部分に思えて、憎悪は増してくる。多くのひとが共感するテーマだと思う。
この作品は暗いテーマに関わらず、コメディー要素もふんだんに入ってるとこが私は気に入った。
『わたしはロランス』を観た方はご存知でしょうが、彼のビジュアルセンスは凄まじい。『マイ・マザー』はそんな彼の原点が見えるような、低予算で最大限にやっていた感じがする。ものすごく努力家なひとだ。11月9日から公開される。
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