グザヴィエ・ドランについて 怒り
何故ここまで、彼の作ったものに惹かれるのだろう。ずっと考えてた。
『マイ・マザー』を観てわかった。それは怒りであると。ドラン作品のキャラクターたちは物凄く怒る。機関銃のように怒りの台詞をぶちまけ、手振り身振りも大きい。テンションが上がり過ぎた様子は、その俳優のキャリア的に大丈夫?と心配するほど見苦しい。
ただ私はそこに強烈に惹かれた。胸の奥をぐらぐらと揺さぶられ、気付いたら一緒に泣いていた。
怒りは感情の中で一番強いものだという。自分自身、怒りに翻弄され人間関係や仕事を失ってきた。しかしどうしようもなく逃れられない感情で、悲しいと同時に何かを生み出す原動力にもなる。グザヴィエ・ドランがそんなことを考えてるのかどうなのかはわからないけど。
『マイ・マザー』の怒りシーンは『わたしはロランス』の10倍はある(笑)「ママは食べ方も汚いし、服のセンスも悪いし、教養がないし、最悪の母親だ」と決定的なことを叫ぶシーンは本当に悲しい。相手に怒るというより、行き場の失った愛情、自身の葛藤の露出。若干、ドランが子役時代の名残のような演技で怒り狂ってる感じもあり、食傷気味でもあるが、後の『わたしはロランス』がいかに進化し洗練されたものであるかがわかる。スザンヌ・クレマンの怒りシーンは素晴らしい。驚嘆ものだ。
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