12 月31日、ありがとうございました!

遅れてすみません。カウントダウンジャパンのレビューやご感想ありがとうございます!


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大脱出

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めちゃくちゃ豪華なプリズン・ブレイク!
だってシルベスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーなんです。こんなアクション界の大スターの競演が実現するとは。
話もよく出来ていて、スタローン演じるブレスリンは脱獄のプロ、それもセキュリティ・コンサルタントで司法機関の依頼により刑務所に犯罪者として入り込む。対するシュワさんは囚人たちのボス、謎めいたロットマイヤー役。ふたりは初め対立するけど、次第に意気投合して巨大タンカーの監獄要塞から脱出する相棒になる。
単純に面白かった。期待を裏切らないアクションシーンも満載。タンカーの要塞は、なんとNASAのスペースシャトル組み立て棟でセットを作ったらしい。どこまでもお金がかかってゴージャス。近未来的な牢獄のデザインは怖いけど、どこかお洒落でちょっと住みたくなる感じがした。
それにしてもこのおふたりは元気です。落ち着いたホームドラマとか老人系ラブコメとか有りがちな方向へ行かずに、筋肉勝負なアクションやってるとこは尊敬に値する。実際かっこいい。
1月10日からロードショー。

はじまりは5つ星ホテルから

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お洒落チックなタイトルの映画。女性監督の作ったイタリア映画と聞いて、ベタなラブストーリーを想像してしまった。実際は違う。
ヒロインは40歳独身の女性イレーネ。一流ホテルのサービスをチェックする覆面調査員で、一年のほとんどを世界中のラグジュアリーなホテルで過ごす。なんて羨ましいんでしょう。高級な服を着て豪華な部屋で寝起きしながらお金をもらえるとは!でも私生活では恋人をなく、自宅に帰れば冷凍食品を温めてひとり食事をする暮らし。
対称的に出てくる妹は生活感バリバリの子持ち女で、「その年で独り身のあなたが心配」などと言われてしまう。
イレーネは旅先で出会う人たちとの交流で、迷ったり傷付いたりしながら将来を考える。自由を選ぶなら孤独死もありえる、なんて厳しい未来も見えつつ、自分らしい生き方を探す彼女に共感してしまった。
現代は一生独身で終わる女性も多いし、離婚してひとりになるひともいる。無理矢理にでも家庭を持てば安住感はあるだろうが、拘束感や惰性は避けて通れない。それにどうしても堪えられないパターンも多いだろう。

少し重いテーマの作品だけど、周りにある景色は美しい。高級ホテルのサービスを体験してるような錯覚も楽しい。いろんな意味で女性的なものだった。

パリ、ただよう花

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ロウ・イエ監督はチャレンジャーだ。
『天安門、恋人たち』で、中国にて上映禁止及び五年間の活動禁止の期間に製作された『スプリング・フィーバー』は同性愛を描いた。そしてこの『パリ、ただよう花』は孤独な女性の男性遍歴をアーティスティックに見せている。
中国という本当の意味で民主化がなされてない国において、自由な表現を発信して行くのは苛酷なことなのだろう。
ただカンヌを始めとしてヨーロッパではとても評価の高いひとである。

上映中の『パリ、ただよう花』はパリに渡った、ひとりの中国女性の虚無的な生活が痛々しい。北京で出会った恋人を追ってきたのだが、あまり先の見えない感じで鬱々としている。そんなときに出会う肉体労働の男。教職の彼女には馴染みのない人種だが、レイプまがいに関係を持つと、何故かふたりは惹かれ合い貪るように深みにはまってしまう。

美しいラブストーリーでは決してない。男は不誠実だし、女も病んでいるし。圧倒的な孤独感だった。肉欲よりも理由のない渇き。必死に求めざるをえない人間の業。

この試写を観たとき「山田さん、女性ならではの視点で語ってください」と担当の方に言われた。私は・・・って感じになった。こんなセックス依存にはならないだろうしなぁ、ただ孤独がひとの何かを狂わすことはわかる。特に彼女は異国で学問を極めようとするストレスもあるわけだし、最愛の恋人は冷たくて壊れてしまってるし。

しかし映画作品として、非常にいいものだと思う。肉体労働者の男をタハー厶・ラヒ厶がやってる。このひとは『預言者』の主役やってセザール賞の主演男優賞取ったひと。イケメンではないリアルな容姿に確かな演技力が光る逸材。これからもたくさんの作品でお目にかかれることと思う。
ヒロインをやったのはコリーヌ・ヤン。彼女もレオン・カラックスの『ホーリー・モーターズ』など出演している女優さん。少し崩れかけた大人の女の魅力に溢れる素敵なひと。

こういう小作品もいいですね〜。派手なハリウッド作品だと疲れてしまうときや、カップルでまったり過ごしたいときなどにピッタリではないかと思います。
個性的なカフェを探す感覚で楽しめそう。

母の身終い

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かなり衝撃的な作品。ただいま上映中。
フランス映画です。ステファヌ・ブリゼという監督は今までもセザール賞を受賞していて、人間の感情の機微を描くのが上手いひとです。

今回の『母の身終い』ってのは、脳腫瘍が悪化して余命が見えてしまったひとがヒロイン。フランスの大女優エレーヌ・ヴァンサンがやってます。とても美しく知的な彼女ですが、ここでは少し小うるさい老女の感じでした。
そのひとり息子をやるのがヴァンサン・ランドン。『女と男の危機』や『すべて彼女のために』などで知られてるひと。麻薬の密売で服役して出所してきたという設定です。
このふたりの静かな日常で起こるドラマが凄い。母は余命を考え尊厳死を選ぶことを告白。病院で意思と関係なく繋がれ死んで行くのが嫌だと。自分のタイミングでプライドを維持した状態で逝きたいということだろう。

スイスには看取りの家というのがある。刑法により医師の薬物処方による患者の自殺を許可しているのだ。条件が合えば外国人でも適用可能。もちろん絶対に治る可能性のない病気の場合だが。多くの審査を経て登録し、看取りの家についてからは五日間過ごす。その間も引き返せるように度々意思の確認が行われ、揺らがないなら五日目に患者自らが服薬し、40分程度で死亡できるそうだ。

この作品のヒロインもその施設を利用する決断をする。それに付き添う駄目人間の息子の様子が泣ける。
死ぬのは怖い、嫌だ、苦しい、などとのたうちまわることもない落ち着いた部屋。可愛らしいベージュ系花柄のベッドヘッドに寄り掛かる小さな母親に向き合う中年の息子。さして仲も良くない関係だったはずだが、一本のワイヤーのように細く確実に繋がる絆が見え隠れする。

末期医療の在り方を考えてしまった。映画としても、人間の弱さや凄みをさりげなく出す演出が素晴らしい。
お正月にこういう作品を味わうのもいいかもしれません。