パリ、ただよう花
- 2014年1月3日 12:16
カテゴリー: 映画
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ロウ・イエ監督はチャレンジャーだ。
『天安門、恋人たち』で、中国にて上映禁止及び五年間の活動禁止の期間に製作された『スプリング・フィーバー』は同性愛を描いた。そしてこの『パリ、ただよう花』は孤独な女性の男性遍歴をアーティスティックに見せている。
中国という本当の意味で民主化がなされてない国において、自由な表現を発信して行くのは苛酷なことなのだろう。
ただカンヌを始めとしてヨーロッパではとても評価の高いひとである。
上映中の『パリ、ただよう花』はパリに渡った、ひとりの中国女性の虚無的な生活が痛々しい。北京で出会った恋人を追ってきたのだが、あまり先の見えない感じで鬱々としている。そんなときに出会う肉体労働の男。教職の彼女には馴染みのない人種だが、レイプまがいに関係を持つと、何故かふたりは惹かれ合い貪るように深みにはまってしまう。
美しいラブストーリーでは決してない。男は不誠実だし、女も病んでいるし。圧倒的な孤独感だった。肉欲よりも理由のない渇き。必死に求めざるをえない人間の業。
この試写を観たとき「山田さん、女性ならではの視点で語ってください」と担当の方に言われた。私は・・・って感じになった。こんなセックス依存にはならないだろうしなぁ、ただ孤独がひとの何かを狂わすことはわかる。特に彼女は異国で学問を極めようとするストレスもあるわけだし、最愛の恋人は冷たくて壊れてしまってるし。
しかし映画作品として、非常にいいものだと思う。肉体労働者の男をタハー厶・ラヒ厶がやってる。このひとは『預言者』の主役やってセザール賞の主演男優賞取ったひと。イケメンではないリアルな容姿に確かな演技力が光る逸材。これからもたくさんの作品でお目にかかれることと思う。
ヒロインをやったのはコリーヌ・ヤン。彼女もレオン・カラックスの『ホーリー・モーターズ』など出演している女優さん。少し崩れかけた大人の女の魅力に溢れる素敵なひと。
こういう小作品もいいですね〜。派手なハリウッド作品だと疲れてしまうときや、カップルでまったり過ごしたいときなどにピッタリではないかと思います。
個性的なカフェを探す感覚で楽しめそう。