ファイアbyルブタン

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フレデリック・ワイズマンの『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』の記憶も新しいが、またクレイジーホースを舞台にしたドキュメンタリー作品が届いた。
『ファイアbyルブタン』では、なんとクリスチャン・ルブタンがショーの演出をしている。あのハイヒール、赤い底は洗練されたセクシーの象徴。女性なら一度は履いてみたいと思うのではないだろうか。ルブタン自身がクレイジーホースにインスパイアされシューズデザインを始めたという。筋金入りのダンサー好きであるようだ。
本作で観られるショーは2012年3月5日から5月31日までの期間限定で開催されたイベントのもの。ルブタンは自身の演出について「女性の身体を賛美し、強調するもの、そのすべてに魅了される。私の仕事とステージパフォーマンスを融合させる最高の方法として、上半身よりも下半身へと注力した。脚線とヒップラインの表現力によって、人間が持ち得る感情の全てを表現することが出来る」と語っている。要するに「おっぱいより足とお尻が好き」ってことですよね?と聞きたくなる。
そのフェチっぷりはマニアの域に達していた。元々クレイジーホースのダンサーはお尻重視である。似たような体型のダンサーを選びメイクや衣装などで個を無くさせる演出をする。ひとつの美の様式がブレることはなく、ブランドとしてのクレイジーホースが作られてきた。その選択眼は、多くの美の追求者に十二分に受け入れられるものだったと、今回は証明した。ルブタンの演出を観るとそう感じられる。
またディヴィット・リンチが音楽で参加しているのも興味深い。ダークな色合いのショーに、ダークな音楽。彼もクレイジーホースに魅了されたアーティストのひとりなのだ。
鍛え抜かれたダンサーの素晴らしいショーの魅力は、劇場で観てくださる方が絶対に楽しめるので触れないでおこうと思います。ちなみに3Dでも公開されます。監督はブルノ・ユラン、『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』の撮影クルーがショーを迫力ある映画作品に再構築しています。
12月21日よりロードショー。

キューティー&ボクサー

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ブルックリン在住の現代芸術家、篠原有司男(通称ギュウちゃん)と、妻でありアーティストでもある乃り子夫婦の姿を追ったドキュメンタリー作品。
アートは悪魔、悪魔に引きずられていくものがあらわれる、という言葉が印象的だった。ギュウちゃんはボクシング・ペインティングで知られる芸術家だ。日本で初めてモヒカン刈りをしたり、ゴミのようなガラクタでアートを造ったり、その反骨精神で60年代、一世を風靡したらしい。しかし1963年、渡ったニューヨークでは思うように認められず燻り続けている。
彼は現在81歳。あまり裕福そうではない暮らしの中で異様に元気。若々しい声だけ聞くと20代の血気盛んな男のようだ。その元アルコール依存症の、トラブルも多い男の側にはいつも乃り子さんがいる。
彼女は19歳のときに美術留学でニューヨークに来て、ギュウちゃんと恋に落ちたという。お嬢様だった彼女の転落人生の始まりだ。
よく聞く芸術家とミューズの関係といえばそうだが、乃り子さんの複雑な葛藤がちゃんと描かれているところが良かった。愛は綺麗なだけじゃない、一欠けらの幸せの為に、物凄い量の痛みを引き受ける覚悟が必要。彼女の静かに燃える怒りや深い愛情が伝わってくる。
キューティーというのは乃り子さんが最近始めたドローイング、ペインティング作品のヒロインだ。彼女自身を投影したキャラクターのキューティーはツインテールの闘う女の子で、夫のブリー(牛、つまり有司男)との葛藤の歴史が描かれている。無神経で飲んだくれのブリーを上手く扱い、勝ち続ける痛快な物語だ。ポップで可愛らしいアニメーションのようだ。でも性器がデフォルメされているところなどは生々しく、可笑しさと哀しさが共存している。乃り子さんは自分とキューティーは違うと言う。そんなに上手く男を扱えなかったと。
アートに向かわざるを得ない二人がボクシングをするシーンがあった。派手な色のペンキを撒き散らしながら闘う。主に殴るのは乃り子さんだが、防御するギュウちゃんも真剣だ。グッとくる、非常にいいシーンだった。

コンポタ味ミルキー

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大玉でなんか嬉しい。コンポタ味のミルキー。ミルクとコーンはいかにも合いそう。スープと飴と考えると微妙だけど。
これはおいしい。名前ほど濃くない。薄い感じ。

少女は自転車にのって

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サウジアラビアの映画。自転車が欲しい、乗って競争したいと熱望する10歳の少女ワジダの物語。
貧乏だから自転車がないのではない。イスラムの国サウジアラビアだからだ。女性は黒い布で全身を覆う国。参政権もない。トーキョーなどというふざけた場所に暮らしてると全く想像できない世界。
そのワジダちゃんは女性差別の甚だしい国にいながら負けていない。学校の規則は破りまくり。お洒落なヘアスタイルでジーパンをはく。お父さんはたいしてお金もないくせに、近々お母さんとは別の女と結婚するらしい。男の子が生まれなければ男性側は勝手に副婚する国。壁に貼ってある家系図を見ると記されてるのは男性のみ。ワジダちゃんは自分の名前を書いたメモをヘアピンでくっつける。気付いて剥がす父。女は存在を許されないのか、そういうのが当たり前って感じが腹立たしい。
果たしてワジダちゃんは自転車を手に入れることができるのか、彼女の闘いを応援したくなる。撮ったのはハイファ・アル=マンスールという、サウジアラビア初の女性監督だ。男たちの間に立って撮影し、指示を出すと不快感を表すひともいたという。困難を乗り越え出来上がった本作は、一筋の光に見える。単に閉鎖的な国の物語というより、形は違えど問題を抱えるたくさんの国のひとの心も温かくしてくれそうな作品だ。

幸せなら

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三本目終了。
十代のダイエット合宿の話だった。ここにも隠された肉欲がチラつく。
「幸せなら手を叩こう」の替え歌で「幸せなら脂肪を叩こう」と歌いながら体操してるシーンが笑えた。
写真は試写室の入ってるビルにあるステンドグラス。昭和っぽい。