セッションズ

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「僕の言葉で君に触れよう」
この台詞にやられた。確か2回出てくる台詞。
『セッションズ』は6歳でポリオにかかり49歳で亡くなるまで首から下が全く動かない、横たわったまま水平の世界に生きたマーク・オブライエンの実話を元に作られた。彼は大学卒業後は詩人として、またジャーナリストとして自活していた。呼吸器カプセルの中でほとんどの時間を過ごすが、一日数時間だけ派遣ヘルパーと外出し散歩するのを楽しみにしている。ウィットに富む彼のユーモアセンスは、障害者という枠を飛び越えひとりの人間として周囲の人間を魅了した。
しかし、ポジティブな彼にも悩みがある。それは女性と愛し合いたいということ。障害者ではハードルは高い。美人のヘルパーに告白するが、慈愛を見せられるだけで恋愛とは言い難い。
そんな折、障害者の性生活についての原稿依頼が入る。取材を進める彼の前に広がったのは生々しいセックスの世界だった。衝撃を受けた彼は新しい扉を開くことになる。

セックスセラピストという職業があると初めて知った。お金で性を提供する訳だが、売春ではない。そこに隠微さはなく、人生の喜びを知る為の数回のセッションが組まれ、セラピストが心理療法士のようにセラピーをする。本作ではヘレン・ハントがセラピスト役をやっていた。成熟した女性美が神々しい。
セラピーという後ろめたさのない行為でありながら、ふたりが生の心を通わせて行く過程が素晴らしい。プロのセラピストが思わず涙した台詞が冒頭にあげたもの。2回目は私が涙した。

この作品、私的にはこの冬のイチ押し。題材の微妙さと何故か日本だけ18禁にされたこともあって、あまり取り上げられないだろうけど、本当に素晴らしい作品。12月6日から順次公開される。