ファルージャ
伊藤めぐみさんという若手の監督が撮ったドキュメンタリー作品『ファルージャ』。2004年、イラク戦争時に起きた「日本人人質事件」を振り返り、当事者の現在を捉えている。
まず私が思ったのは、何故今それを振り返る必要があるのか、なんの為に?という疑問だった。当事、そういうことがあったのはもちろん覚えている。人質になって武器を突きつけられている影像の恐ろしさ、殺されないように、無事に帰れるようにと日本国民は皆思っただろう。
『ファルージャ』を観ていく内に、私たちは随分誤解していたらしい、ということに気付く。人質になった三人に対し、危険な場所へわざわざ行く無鉄砲で浅はかな人間であると、どこかで感じていたこと。心ないひとは当事者が解放され帰国しても、批判的な意見をぶつけ「死んだ方が良かった」とか、酷いものだと親族にまで「お前を殺す」など手紙を送りつけるケースがあったという。
当事者を取材すると、彼らは決して無鉄砲でも浅はかでもなかったことがわかる。個人で医療支援を行っている高遠菜穂子さんは、大手の支援グループの目が届かない場所に赴き「ここは水が届いてません。ここはこんな被害があります」と知らせる穴的な役割をしていると言っていた。そんな地道な活動でも命が助かったひとの数は多い。気付いてしまったから目を逸らすことができず、役割を受け入れ人生を捧げているように見えた。
他のふたりも切実な使命を全うしているといった印象だった。
恐いのは当事の政府の切り捨て方と世論。テロには屈しないとか自己責任だとか、正しいようでどこか正しくない。武装グループの意図をちゃんと理解したマスコミが動き、救出に結び付けたという事実。
この作品は多くのひとが見てくれたらいいなと思う。製作側の熱い意思が伝わってきた。監督の伊藤さん、私の隣で試写をご覧になってました。よくやりましたね!と言いたかったけど恥ずかしくて・・・すみません。また次回作ができたら拝見したいです。