ハッシュパピー
原発事故以来、あまりCO2問題を聞かなくなった気がする。でも地球の温暖化が止まったわけではない。
『ハッシュパピー』はそんな私たちに「ちゃんと世界を見ろ」と強く訴えてくる作品だった。
美しい島、通称バスタブ島に父親と暮らす少女ハッシュパピーが大活躍。小鳥の身体に耳を当て鼓動を確かめる彼女は、生命というものを頭ではなく実感として理解している。貧しい暮らしに負けることはない。心に唯一ある哀しみは、いなくなった母親のこと。狩りも料理も上手かった母親を魔法使いのように思い、焦がれている。そんな彼女が住む島に百年に一度の嵐が襲い、家も動物もひとも奪われてしまう。それは地球の温暖化や生態系の変化を匂わせる。父親の病気、住民らへの強制退去命令、ひとりの娼婦とのふれあい。たくさんのことが小さな彼女に起こる。
負けない強さとはこんなに美しいものなのかと目を見張った。ラストに水が迫る中を住民と歩くハッシュパピーの姿。原発の国の私たちにも強く響くだろう。