壊れたもの、褪せたもの
私のローテーブル。ガラス板が嵌め込みのものなんだけど、割れてる。下に入れたカード類は日焼けして色褪せている。
アジアンなものが好きだった頃に手にいれたもの。インドネシア製で茶色の木目調だった。
ある時、部屋中のものを真っ白にしたい欲求にかられた。ペンキで天井も床も壁も塗った。ミニコンポも椅子も塗ったので、テーブルだけ塗らないのも変だし、当然のように白く塗った。
その名残がこれ。コーヒーや赤ワインをこぼす度に汚れる。拭いても取れなくなって、いつか塗り直そうと思ってるうちに、まあこれもいいやという気になった。見ようによっては風情がある。
ガラス板が割れたのは上でアロマランプを使ったとき。当時は蝋燭でオイルを温めるものが主流だった。でも熱に耐えられなかったのか、テーブルのガラスがパリンと割れた。物凄くびっくりした。
新しいガラス板を入れようと探した。テーブルを買ったお店にも聞きにいったけど、そんな前のものは取り扱ってないそうだった。インドネシアのものなら粗い造りかもしれないから、サイズを計測しガラス屋さんでオーダーしても、ぴったりにはめるのは難しいだろうと言われた。やすりで削りながらはめることを想像すると、すごく面倒だ。
かといってガラス板ひとつの為に棄てて、新しいテーブルを買うのも抵抗がある。で、そのまんま。壊れた美学だと思い込むようにする。
中に入れたカードは天使や妖精や「ボンジュール」などと今の私から見るとふざけたものの極致。でも心が殺伐として体重が40キロを切っていた時期だった。身長が167センチなのでガリガリだった。馬鹿みたいに甘ったるいものを求めた。濃いココアにマシュマロと生クリーム入れたものとか、優しいだけの浮わついた言葉とか、こういうファンシーなカードとか。
心が中庸になるに従い甘ったるいものは、それほど必要ではなくなる。
テーブルのガラス板の下に入れたカードは何度も夏を越えてすっかり日焼けした。ピンクや赤など鮮やかな色は薄いブルーや緑に変わった。
テーブルを動かす度にカード類は一ヶ所に寄ってしまう。色褪せた天使や 妖精や「ボンジュール」がごちゃごちゃになった。
それも今は面白いと思う。ここ数年の自分の変化というか、全く所有しない自分写真や日記の代わりの感じがする。