ウォールフラワー

プロムの定位置は壁際、そんな高校生チャーリーが主人公の青春ドラマ『ウォールフラワー』。1999年にアメリカで出版され「ライ麦畑でつかまえて」の再来と絶賛され、社会現象を巻き起こしたスティーブン・チョボスキーのベストセラーが原作。
映画化にあたりチョボスキー自らが脚本も監督も手がけた。それは最良の選択であったと思える。
非常に個人的な性質を持つ作品がなぜ多くのひとの心をとらえたのか。目立たない少年の内面にある憤りと、キラキラ光を放ちながら近づいてきた二人の存在。新たな人生の幕開けを感じさせつつ、暴かれる過去の痛み。何百万人もの若者が「チャーリーは私だ」と共感したという。
私の大好きなエズラ・ミラーが友人のパトリック役をやってた。彼は『少年は残酷な弓を射る』が素晴らしかったのだけど、今回もちょっと訳ありのカリスマ高校生役はハマっていた。エマ・ワトソンのキラキラっぽさもよかった。ロックの激情のような色合いも。
だがこの作品のポイントは、青春のきらめきではないと私は思っている。心に巣くっている暗黒、それをないことにして生きたいと願う切実さだと思う。痛む頻度や度合いは違うだろうが、誰の胸にもあるものだろう。
チャーリーの心が浄化される日はいつか訪れるのか。観ていると、迷いながら一緒に歩いているような感覚になった。



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