ロマン・ポランスキー 初めての告白

大好きなポランスキー、半生を語る作品があると聞き観に行った。紹介する最適な時期を探ってるうちに、もう公開日が過ぎていた。

この作品で動くポランスキーを初めて見た。感想として強く残ったのは、このひとはなんでこんなに前向きなんだろう、ということ。言わずと知れた『戦場のピアニスト』や『ローズマリーの赤ちゃん』などの彼の作品は重く、人生の深淵を暴くかのような特徴がある。こんなに明るい朗らかな笑顔を見せるひととは驚きだ。
語られる内容が凄い。1933年パリ生まれでポーランドに移住するが第二次大戦中は
ナチにユダヤ人ゲットーへ追いやられる。母は殺害され友人も銃殺される。彼はカトリックのふりをして生き伸び、疎開先の家庭で映画の面白さを知る。
そこでもブルーベリーを摘んでるときに銃を突きつけられたり、虫の羽音のような軍用機を見上げたり、恐ろしい体験だったろう幼少時代を淡々と語る。
後に映画の世界に入り、才能を開花させるのだが、そこからも順風満帆だった訳ではない。怪しい信仰宗教に妻を殺害されたとき、妻は妊娠中だった。ロスで未成年者に性関係を強要した罪で逮捕され、国外追放
されたり逃亡したり忙しい。長い時間をかけ充分に謝罪したようだが、マスコミはいつまでもスキャンダラスなロマン・ポランスキーを追いかける。もう中年になった、かつての少女の方が逆に心配してる感じだった。
この作品ではスイスの家でインタビューされている。やっと最近は安心して暮らせるようになったようだ。よく笑う。
不思議なんだ。このひとが穏やかで平和主義者なのが。「自分は楽観的な人間」と言っていた。そして作品の壮絶さ。血や殺しを、なんのてらいもなく描く平熱さ。地獄を生きたひとの日常的な狂気なのだ。このひとは幸せなんだ。誰が批判しようが、時代に翻弄されようが、未来が真っ暗だろうが。
壮絶な人間物語だった。