眠れる美女

2009年、ある尊厳死事件がイタリア全土を揺るがした。17年前に21歳で交通事故により植物状態になった女性。両親は延命措置の停止を求め、カトリック色の強いイタリアでは長い裁判になった。08年に訴えは認められ、受け入れる病院も見つかったが、保守層の支持を集める首相は延命続行の法案採決を画作する。
こんな実際の事件を基に巨匠マルコ・ベロッキオが丁寧に紡ぎ出した傑作『眠れる美女』。
三つの物語りが同時進行で展開される。どれも尊厳死を巡る話。正直、重く痛々しい映画だ。しかし自分や身近なひとにも絶対起きないことではない。個人的には自殺癖のある女性のエピソードがぐっときた。何度も死のうとする彼女と何度も止める医者。どこか恋愛的でもある。幸せそうではないにしても。うたた寝する医者を見下ろし、窓から飛び降りようとする女。そして自らやめる女。愛は深い。
この作品にはメッセージも正しさも提示されない。観るひとの心の内にきっと正解があるに違いない。
10月19日からロードショー。
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