アントニオ・ロペス

現代スペイン・リアリズムの巨匠アントニオ・ロペスの作品展を観る。
鉛筆画のひとかと思ってたのだけど、油絵も彫刻もエッチングもあった。50年代から現在に至るまで生み出された作品の数々。貫かれているのは被写体への敬意。
あの優しい色彩と、穏やかに流れる空気感は、そんな思いの現れなのだろう。
マドリードの目利き通りを描いた『グラン・ビア』は74年から81年までの期間を経て作成された。本人のインタビュー映像によると、夏の同じ光が必要だから毎年8月1日に描いたという。そんな作り方をするので、一度にたくさんの仕事をしていると言っていた。
私は28年の年月を費やして完成したという『ルシオのテラス』が気に入った。原色ではないバラがテラスに絡まっている。すすけたような赤の地面、金属の手摺り、遠くに霞む街並み、どこもかしこも美しかった。
光を大事にしているアントニオ・ロペス、自然光だけではなく冷蔵庫の白々とした蛍光灯まで魅力的に見せている。簡素な住宅を彼の目を通して見ると、こんなにまでアートになってしまう。懐かしいような取り残されたような寂しさも感じた。
リアリズムと一言では表現しきれない、素晴らしいものだった。
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