THE ICEMAN 氷の処刑人

1960年代から86年までの間、100人以上を殺害したと言われるシリアルキラー、リチャード・ククリンスキーは実在の人物。
依頼された殺しをビジネスとしてきちんとこなし、家族を愛し続けた彼の二面性に深く迫ったのが本作『THE ICEMAN 氷の処刑人』。
『マン・オブ・スティール』のマイケル・シャノンが冷酷な殺人鬼を演じている。逮捕されるまで夫の闇を知らなかった妻をウィノナ・ライダーが久々の無垢な可愛らしいキャラでやっていた。
この作品の見所は、やはりマイケル・シャノンのゾッとするような色気だ。冷たい視線、異様なほどの集中力。
子供時代の虐待経験を持つ者は、痛みに関する感覚を麻痺させる能力がある。こういう特性が生かされると犯罪者や性的異常者になると言われる。マイケル・シャノンは感情をなくし平常心のまま殺害ができる犯人の内面を上手く表現している。倒錯した性癖の為に連続殺人をする犯罪者ではなく、ただ任務として、家族を裕福に幸せにする為に殺す。どこかが完全に壊れているのだが、悪意や憎悪などとは無縁の純粋さだ。
この作品はもちろん善悪を問うものではない。人間の心の闇、その絶望の深さに気付けない者がいるということ。そのこと自体の恐ろしさである。貧困や虐待に対する社会の無関心、物質主義、資本主義の歪みなど、多くの問いが隠れているように思えた。







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