私は美人女優が好きだ。
親近感のある癒し系とか、まあまあ美人で感情移入しやすい主役系より、すっげー美人の隙のないひとが好きだ。
でもそういうひとは不幸なことが多い。どんなに演技力があろうが、芸術の勉強を死ぬほどしてようが、周りに気もお金も使おうが、｢美人だからね｣と言われ、美人役だけを与えられ、賞も貰えないことが多い。
そんなことと戦い続けてきたんじゃないかと勝手に思ってる、ニコール・キッドマン様の出演作品『ペーパーボーイ 真夏の引力』は7月27日からロードショー。
この作品は凄い。『プレシャス』のリー・ダニエルズが監督をしている。『プレシャス』は恵まれない黒人の少女が運命に立ち向かい人生を掴んで行く感動的な作品だった。
そんなひとが今回描くのは、スキャンダラスで汚物や血液が匂ってきそうな生臭さいっぱいの夏だ。人種差別が色濃く残る1969年のフロリダ。死刑囚の冤罪の可能性を睨む新聞記事、運転手として雇われたその弟、同僚の黒人記者、人格障害っぽい死刑囚、その婚約者など濃いひとばかりが出てきて、バシバシと火花を散らす。
ニコール・キッドマンが演じたのは死刑囚の婚約者。それも死刑囚マニア？って感じで、収監されてから文通で知り合い婚約までしたしまったらしい。ヤバい、非常にヤバい女だ。バービー人形の如く派手なボディコンシャスな服を着て、上下濃いアイライン、誰とでも関係を持ってしまいそうなビッチぶり。しかもそんなに若いわけではない。ニコール・キッドマン好きな私としては｢なんで～！私のニコールが！｣って感じ。でも、同時にこのひとの熱い魂に尊敬も覚えた。とりあえずあまり言いません。ぜひ劇場で観てください。
ジョン・キューザックも本当に素晴らしい。｢このひと見たことある！｣って思った。それは彼の過去の作品の記憶なんだろうけど、何故か指名手配の写真で見たような勘違いまでしてしまう。それほどまでにリアルな犯罪者をやっている。初めての面会シーンのグロさは吐き気を催すくらいだ。
全ての場面の隅々まで、徹底して暑苦しさを貫いた作品だった。まさに｢神様が汗かくほど蒸し暑く、美しくも残酷な夏｣だった。素晴らしい。
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