ダゲレオタイプの女を観て思う

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昨日は黒沢清監督の新作を観ました。フランスで撮影された『ダゲレオタイプの女』です。全編フランス語で景色も色合いもフランスそのもの。
とても良かったです。ダークな幻影なような雰囲気。哀しいホラー・ラブロマンスです。
でも、思ったのは黒沢さんはフランスで撮っても日本だなぁということ。
死生観とか感情の機微が非常に日本的。それはとてもいいことで他国に誇れるものだと思います。
主演はタハール・ラヒムです。彼は『屋敷女』や『預言者』の頃から私、ずっと推してます。もちろん勝手にですが。予想通りというか、当然というか、今やフランスを代表する俳優になってます。
今回はメチャクチャこの人って器用!って感動しました。だって最後には日本人に見えてくるほどですから。
通常のフランス映画に出てくるフランス人はもっと大雑把じゃん、いい加減な癖に不機嫌そう(でもなぜか洒落ててカッコいい)で、議論のときだけ妙にテンション高い、というのがザ・フランス人でしょ。圧倒的偏見に満ちた私です。タハール・ラヒムは下心もある策士で、細かな愛情もある難しい役柄(とても日本的)を見事にこなしてます。
ヒロインのオリヴィエ・グルメも『女っ気なし』で観たときと変わってて、繊細なジャパニーズガールの雰囲気になってました。
フランス映画のフランス女は、もっと肩や胸を出しまくり、髪も起き抜けみたいでヨレヨレシャツを着たかと思ったら、次の瞬間は女豹のような目で男を射るものだと思ってました。オリヴィエさんは日本人みたいにスリムで、可愛いミニワンピとかタイツとかで、フェロモンは極力避けてるような印象。

マチュー・アマルリックが出てるのは彼の映画魂かなと。彼は映画監督でもあるし、大御所や際立ったひとの作品には参加したがる。探究心がそうさせるような。だって別に彼の役はそれほどメジャー俳優でなくても良さそうなものだったから。

そんなことを考えながら観てました。
私自身がレコーディング中だから、特に思うところがあったようです。洋楽はもちろん参考にして作るわけで、でも出来上がるのは紛れもなく日本のもので、またそうでなければいけないような気がします。
それが例えギリシャで作ったりアイスランドで録音したものであったとしても、しっかり根付いているものは捨てずに大事にしたい、そんな風に思いました。

『ダゲレオタイプの女』は10月からロードショーが始まります。またヒットするんだろうなぁ。