ボーダレス 僕の船の国境線

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今日観たものです。

イラン映画です。
私、油断してました。これ、めちゃくちゃいい作品です。

これまでもイランは名作を生み出す産地でしたが、この『ボーダレス 僕の船の国境線』はちょっとびっくりな完成度です。
アミルホセイン・アスガリ監督の長編デビュー作です。彼は演劇やテレビ、映画の助監督などキャリアは長いひと。
長年溜めてきた才能とエネルギーを注ぎ込んで作られた印象です。

名作だけどずっと観てると眠くなる(すみません)のがイラン映画の特徴と思ってました。
こちらは最初から最後まで息をつかせないような緊張感があります。

物語の舞台は、イランとイラクの国境に流れている川に浮かぶ廃船。
説明はないのですが、戦争孤児らしきひとりの少年がその廃船でたくましく生きています。
国境を警備する兵士たちに見つからないように川を潜り、魚や貝で作った工芸品をお店まで売りに行き、僅かなお金をもらい食料を調達してます。

そこに突然現れるのがひとりの少年兵士。銃を突きつけ甲板にロープを張り、無理矢理の陣地分けをします。
少年兵は船の廃材を売りに行って生計を立てているようです。
もちろんふたりは対立し殴り合いもするのですが、あるとき少年兵には赤ん坊がいることがわかり事情が変わってきます。しかも実は少年ではなく女の子だったこともわかります。
これは中近東では多々あること(危険から身を守る意図)で、この設定で驚かせようとした訳ではないと、監督は言ってます。

その後にまた新たな侵入者、アメリカ人の脱走兵が現れます。
少女や主人公の少年からしたら家族と家を奪った憎い敵なのだけれど、時代の犠牲者であることは事実。

この三人が頭を付き合わせ食事するシーンは、かなり迫力あるものでした。
言葉によるコミュニケーションは最後まで不可能。少年はペルシャ語、少女はアラビア語、アメリカ兵は英語なので。

人間の愛って凄いと考えさせられます。
まさにボーダレスです。

決着のつけ方もリアルで泣けました。
実際にこういうことは起きているのだろうと思います。

無駄のない影像にかなりやられました。