ミッドナイト・ガイズ

これを観ずして何を観るの?とまで強く言いたい作品、『ミッドナイト・ガイズ』。
最高にイカす台詞のオンパレード!書いたのは若手劇作家ノア・ハンドル。ツボを押さえた展開も素晴らしい。
製作は『ミリオンダラー・ベイビー』のトム・ローゼンバーグ、ゲイリー・ルチェッシ。
監督は元俳優のフィッシャー・スティーブンス。『ザ・コーヴ』というイルカ猟を扱ったドキュメンタリーを撮ってアカデミー賞を受賞したひと。あのときは映画館に警官が配備されて物々しかった記憶がある。日本ではかなり誹謗中傷された内容だった。また彼が製作した『映画と恋とウディ・アレン』はウディ・アレンを知る為には重要なドキュメンタリー作品。私はこのひとを視点をとても信用している。
そして主演はアル・パチーノ、クリストファー・ウォーケン、アラン・アーキン。この三大名優がキュートに暴れまわる夜など今まで誰が想像しただろうか。そんな夢のような世界が実現された本作。しかし上映会場は多くないみたいで、扱われ方に少し残念な感じがしている。
ストーリーは28年の刑期を終え出所した老いたギャングのヴァル(アル・パチーノ)と迎えにきた仲間のドク(クリストファー・ウォーケン)がお祝いにと街へ繰り出す楽しい夜の話。だが実はドクには重い石のような任務が腹の中にある。それはヴァルを朝までに殺害すること、そうしなければやっと掴んだ穏やかな生活も愛するひとも奪われる。
ヴァルの弾けっぷりには目を疑う。青い薬(男性が元気になるやつ)をひと瓶飲む?アル・パチーノでしょ、ゴッド・ファーザーでしょ、あなたは!とツッコミたくなる。他にも緑内障の薬を鼻から吸引しようとしたり、おねーさんとダンスする為にDJを買収したり、やりたい放題。でもダンス場面は『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』の名シーンを思い出して少しウルッときた。この辺が上手い、映画ファンの心をわかっている。
ふたりは老人ホームに入れられている三人目の仲間、ハーシュ(アラン・アーキン)も連れ出し、盗んだスポーツカーでひと暴れしようと企む。呼吸器に繋がれ臨終も近そうだったハーシュは、昔の水に触れた途端、娼婦にモテモテのアニマル親父に戻りスリリングなカーチェイスも披露する。三人はたまたまトランクに監禁されていた裸の女も助け、ボランティア?の如く悪党を倒しに行く。

とても巧みな作品。もはやコメディ俳優として最高峰のクリストファー・ウォーケンはアル・パチーノやアラン・アーキンとの共演について「自分を良く見せてくれるパートナーと踊るダンス」と表現している。
また主題歌を担当したのはボン・ジョヴィのリーダー、ジョン・ボン・ジョヴィ。本作の脚本に惚れ込みヴァルになり切り曲を作った。「神父様、お許し下さい、罪を犯しました」、「何て酷いザマだ、お前もさ兄弟」という歌詞から書いたという。
『Not Running Anymore』はゴールデン・グローブ賞にノミネートされた。

やはりドクはヴァルを殺すのか、いつしか観ている者の胸も痛み、どうか殺さないで、朝が来ないで、と願ってしまう。
一晩の男たちの葛藤を爽快に見せてくれる本作、映画ファンの皆さまと劇場でシェアできたら嬉しいです。11月16日からロードショー。





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