いとしきエブリデイ

『ひかりのまち』のマイケル・ウィンターボトム監督の新作『いとしきエブリデイ』。5年もの歳月をかけて撮られた奇跡にも近い影像。そこにドラマティックな展開があるわけでも号泣できるわけでもない。ただ淡々と描かれるノーフォークの美しい風景とある一家の生活で、繰り返される音楽はマイケル・ナイマンのリリカルな曲。
これを観たときドキュメンタリー作品かと思った。あまりにもリアルで日常的だった。
一家の大黒柱であるイアンは服役中で、子供4人を育て仕事を掛け持ちしているカレンは疲れている。イアンの服役期間は5年だ。家族は刑務所の面会日を楽しみにして、バスと電車を乗り継いで会いに行く。
子供役の4人は本物の兄弟だそう。最初のシーンに現れてから最後辺りでは明らかに成長している。長い時間の経過。面会シーンの「パパ、どこにもいかないで」と泣くとこは驚く。プロの子役さんではなさそうなのに超リアル。
カレンはどう見たって可哀相だ。ドラッグかなにかの罪を重ねる夫に嫌気は刺さないのだろうか。近づいてくる男もいたりして迷う様子も切実な感じ。彼女の冷えた視線には諦めが滲むが、きっと家族への普遍的な愛もあるのだろう。
厳しい状況のドラマを、緑の原っぱや湿った森に合う音楽が優しく包む。不思議な後味の作品だった。



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