セブン・サイコパス

これ最高。完全個人的好みでいうなら、この秋一番の作品。こんなに笑ったことはない。しかもその笑いセンスは超一流。ちなみにこの作品はコメディーではない。
前に『ヒットマンズ・レクイエム』という作品をケーブルテレビの映画チャンネルで観た。暗く沈んだ街、ベルギーのブルージュで殺し屋が潜伏する話だった。独特のダークさとカテゴライズしづらい笑いに満ちていて、異様に引き付けられた。その作品は日本では劇場未公開。ただ不思議な魅力を強く記憶した。
『セブン・サイコパス』は同じ監督・脚本だ。マーティン・マクドナーという名を私は忘れない。これからもっと重要になってくるだろう。
前作と同じくコリン・ファレルが主人公マーティを演じる。猟奇殺人や銃撃ものを得意とする人気脚本家(マーティン・マクドナー自身がモデルと思えて仕方ない)。いくらプロの脚本家であってもスランプはある。新作映画のネタが全く浮かばない。第一、残酷な犯罪劇にも銃撃戦にも飽きていた。できたら仏教徒の精神性の話なんかを書きたいと思っている。しかし世の中が彼に求めるのは馬鹿臭い猟奇殺人もので、うんざりしたマーティは酒に逃げる日々だ。そんな中で友人ビリーがネタ作りに協力してくれる。ビリーはマーティの信奉者でもあって、ついつい過剰にしゃしゃり出てくる。新聞広告に「イカれた奴募集!サイコパス待ってるぜ」と載せてしまうほど。
やってきたサイコパスは本物だった。それから出会ってしまうサイコパスもヤバい奴らだらけ。マーティは今まで過激な脚本は死ぬほど書いてきたが、本物のサイコパスは格が違った。

コリン・ファレルの眉毛はずっとハの字、目は点になりっぱなし。クリストファー・ウォーケンの冷静に狂ってる様子が面白い。最近ヒット続きのウディハレルソンの犬好きボス役も凄かった。とんでもない怪優っぷりを見せてるのはトム・ウェイツ。ビリーを演じるサム・ロックウェルはもうひとりの主役だった。
ぜひ劇場で多くの方と共有したいと思うので、あまりどう面白いとは言えないのだけど、ひとつあげるなら、散々残酷なことをしているサイコパスたちがマーティに「酒を飲み過ぎじゃないか?」「飲まないと約束してくれ」「飲酒運転するのか」とまともなことを言いたがる場面。お前が言うか、とついツッコミたくなる。
巧みな脚本が導くダークな笑いのレベルは『ヒットマンズ・レクイエム』のときから数倍もアップしているように見えた。
11月2日から全国でロードショー。




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