父の秘密

第65回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリに輝いた作品。
メキシコのマイケル・フランコ、『父の秘密』。ベルイマンの『処女の泉』を想起させるようなテーマ。子を凌辱された親はどう救済されるのか、復讐で終わってしまうのか。
本作の英題は『After Lucia』。スペイン語のLuciaは光という意味で、自動車事故で亡くなった妻の名でもある。ルシアの亡くなった後の話が本作品だ。
料理人の男は妻の不在に耐えられず、なかなか立ち直れない。支えようとするのはその娘。自暴自棄になる父の様子に、娘は自身の抱えている問題について相談することも諦めている。彼女は恐ろしい事態になっているのに。
悲痛な叫びを押し殺したような哀しい映画だった。マイケル・フランコ監督は「競争社会というものは、人の痛みを無視するものです」と述べている。
素晴らしい作品だ。だが個人的には救済が欲しいと思った。現実は哀し過ぎるからスクリーンの中には何かのルシアがあった方がいい、と願うのは甘いだろうか。



Android携帯からの投稿