『みつばちのささやき』や『ポネット』 を想起させるような大きな目の女の子。
オーストラリアの広大な大地に暮らす一家の話。手作り感いっぱいの一軒家には大きなイチジクの木がある。
ちょっとファンタジックで、でも現実を強く生きるエネルギーに満ちた『パパの木』が6月1日、公開になる。
この家の大黒柱であるピーターが死んでしまうところから始まる。シャルロット・ゲンズブール演じる妻のドーンは喪失感から思考停止状態に。家は荒れ果てて行くが、4人も子供がいて世話もしなきゃいけないし、仕事も探さなきゃならないしで、切羽詰まってしまう。
そんな中、小さな希望の灯がともる。末娘のシモーンが「木にパパがいる」という秘密をドーンに囁く。真偽がどうとかいうのが大事なのではない。日に日に存在感を増してくるイチジクの大木は、残された者への希望の象徴なのだ。
ただ『パパの木』は乙女向きのメルヘンさんではない。ドーンの生々しい性欲(アンチクライスト以来、シャルロットに恐れるものはなし)だったり、木の狂暴に近い成長ぶりだったり、極めつけは家を破壊するほどの大嵐まで起こる。
日本人としては311を思い出し胸が詰まった。しかし、だからこそ強く生きようとする人間の姿を見たくなる。
『パパの木』を撮ったのは『やさしい嘘』のジュリー・ベルトゥチェリ監督。ちょうど本作の脚本を書き始めた頃に夫が病気になった。まさか死ぬとは思ってなかったが、亡くなってしまい茫然自失になったという。でもあるとき、映画の中のドーンのように何か光が射すのを感じ、それがヒントになったそうだ。
強い風に吹かれながらも立ち続ける力は、私たちの中に確かにある、と思わされた。
写真失敗。ヨーグルトフロートが入り込んでしまった。