麻酔
『黒うさぎ』に入ってる「麻酔」という曲。
不可解なものだと言われます。
でもその意味は誰も聞いてくれないので、自分で言ってしまいます。
前の投稿でもあるように今年は麻酔薬を何回も打つことがありました。
あの痺れてくる変なものは、自分が自分でなくなるような感じがします。
気持ちよくはないけど痛みから逃れられる逃避感覚です。
写真は佐藤亜有子というひとの小説。
このひとは性愛小説家と呼ばれるけれど、私はトラウマ葛藤作家だと思ってます。
本人が明かしているところによると、父親による性的虐待の被害に遭われていたそうです。生々しいことは想像もしたくありません。
そういうひとに自己否定、不安、不信など、圧倒的な闇が付き纏うのは当然だと思います。
自信が持てないからひたすら勉強して東大に入ってしまったりします。
心が混乱するから本を書いて作家デビューしちゃったりします。
他人からしたら、なんて恵まれた人生だろうと見えるわけですが、本人的には死ぬほど苦しかっただろうと思います。
幾つかの執筆活動をした後、彼女はお酒をたくさん飲み、抗不安薬と睡眠導入剤を服用し過ぎて、死んでしまいました。
なんか他人事に思えない感じです。もちろん私には東大に入れる知能も本を書けるような才能もありませんが。
彼女の作品はほぼ全部読みました。文体は少し陶酔的で気取ってる印象を持ちましたが、根底にある感情は痛々しいものばかりでした。強い自己愛と相反する自己否定感に捕われて、常に闘っていたようです。
私は同類である彼女を悼む為になにかしたかったです。遺された文章を読んで理解すること、辛かったねと心の中で言ってあげること、そして勝手ですが彼女のイメージで曲を作ろうと思いました。
それが「麻酔」です。
ごく普通の日常にありながら、心は孤島の地下室に監禁されているような感覚。
四角いコンクリートの部屋にあるのは湿った毛布と消毒薬臭い水だけ。通気孔から流れてくる空気や微かな音に救いを求めるけれど、何も変わらない。
小さな窓から見えるのは暗い海でクラゲがぷかぷか浮いている。クラゲは自由で気持ち良さそうなのに、自分は何処へもいけない。
絶望から逃れられるとしたら麻痺するこた、わからなくなること。自分が自分でなくなること。
こんなイメージで作りました。結構うまくいった気がします。
彼女が喜んでくれるかは不明です。大きなお世話かもしれないです。
そんな曲も収録されてますアルバム『黒うさぎ』、聴いていただけたら嬉しいです。